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このページでは、私の作品づくりに込めている想いや世界観についてご紹介しています。日常の中で、ふと手を合わせる瞬間があります。食事の前の「いただきます」や、心の中での小さな願い。これらの行為は、目に見えないものへの感謝や敬意を表す、日本の文化に根付いた美しい習慣です。
私の吹きガラスの制作も、そんな静かな願いの延長線上にあります。
祈りを大切する環境で、幼少期から親しんできたアニメや漫画の世界。伝統とポップカルチャー、静けさとユーモアが交差する中で育まれた感性が、私の作品の源となっています。
Miwa Ito / Glass Artist
Artist Statement
ここに生かされている感覚から
私はかつて、海外で暮らすことを夢見ていました。けれど、災害や社会の変化、価値観の揺らぎの中で、いつしか心に静かな気持ちが芽生えました。
「日本にいたい。この土地を守りたい。作品を通して、日本の尊さを未来へ残したい。」
思いやり、感謝、目に見えないものへの敬意。何度も同じことに丁寧に向き合う姿勢。 それらは古い文化ではなく、これからの時代に必要な“種”だと信じています。
私の作品には、日本の職人文化に通じるような丁寧さや繊細な感覚、そしてどこか懐かしく、自由な遊び心がにじんでいるように思います。
吹きガラスという祈りの時間
目には見えないものを信じるところから、私の吹きガラスの制作は始まります。
私は命のようにあたたかいかたちを探しながら、溶けたガラスと対話します。 その工程は、自分がガラスを動かしているというより、導かれているような感覚です。 その瞬間、私はこの地球に“生かされている”ことを実感します。
一瞬の集中と信頼が必要で、まるで祈りのような時間。 うまくいくかどうかも分からない中で、自分の手から何か大切なものが生まれることを信じる—— その感覚は、祈ることととても近いのです。
祈ることは、特別な行為ではなく、静かに目を閉じて「ありがとう」とつぶやくようなこと。 すべてのことに感謝をすること、そしてまだわからない未来に希望を持つこと。 そうした祈りの感覚を、ガラスのかたちに込めています。
モチーフに込めた思い
私の作品には、命や日常の中にある“気づき”を形にするための、さまざまなモチーフが登場します。
私は、生き物や食べ物、日用品など、さまざまなモチーフを吹きガラスで表現しています。
生き物
生き物には、「生きている」という強い意志が宿っているように感じます。 特に、自然の中で自由に生きる姿には、圧倒されるような美しさと力強さがあり、私はその存在に憧れを抱きながら制作しています。
生き物は、言葉を持たずとも命のエネルギーを全身で表していて、 その“今を生きる力”や“自由であることの尊さ”を、作品の中でそっとすくい上げたいと思っています。
食べ物
食べ物には、「いただきます」という言葉に込められた感謝の気持ちを表しています。
この言葉には、ただ「食事をはじめる」という意味だけでなく、命をいただくことへの感謝、 自然の恵みやそれを育てた人たち、運んでくれた人、調理してくれた家族、 そして自分が今ここで食事をとれる健康な身体への感謝—— 見えない多くの存在への敬意が込められていると感じています。
命、大地、家族、環境…日常の食卓の裏側にある、すべてへの敬意を、楽しくて温かいかたちで伝えたいと思っています。
日用品とキャラクター
昔から私は、自然や物に対する深い敬意と感謝の心を大切にする環境で育てられ、 日常のあらゆるものに魂が宿っていると感じてきました。
日本には「八百万の神」という思想があり、山や木、石、道具にまで神様が宿るとされ、それにも通ずる感覚です。
この感覚は、私にとってとても自然なもので、今でも作品の根底に流れています。 日用品や果物にキャラクターを宿すことで、 「このリンゴは今どんな気持ちなんだろう?」と想像してもらえるような、優しい視点が生まれたら嬉しいです。
世界との接点としての作品
私の感性の背景には、日本の文化と共に、ポップカルチャーから受けた影響があります。
色彩やフォルム、遊び心には、私が幼少期から見てきたアニメや漫画、映画の影響が強く表れています。 笑いと哀しみ、静けさと奇妙さが共存する世界。 それらの物語は、「世界はどう見えるか」だけでなく、「世界をどう“感じるか”」を教えてくれました。 私の作品もまた、そんな感覚の延長線上にあると思っています。
細かな部分にまで心を配ることは、私にとって敬意であり、愛のかたちです。 そのこだわりの中に、日本人としての感性が自然と息づいていると思います。
私の作品を通じて、見る人の心に優しい気づきや共感が芽生えることを願っています。
忙しさや変化のスピードが増す現代の中で、思いやりや感謝といった感性が見えにくくなってきているように感じます。
ガラスという、何十年、何百年と形を保ち続ける素材に託して、 今この時代に感じている美しい心や想いを、未来へ静かに届けていきたいと考えています。